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ハゲタカ出版

  ハゲタカ出版社
 いつの頃か忘れてしまったが,よく,論文投稿の案内が来るようになった。例えば,「あなたが##国際会議で発表した##という論文は非常によくできていました。付いては,私の雑誌に投稿しませんか」というような内容である。初めのうちは,オッ,俺の研究が認められたのか,とうれしくなったものであるが,残念ながら国際会議に出した論文を雑誌に投稿するわけにもいかないので,出したことはなかった。ところがこれがたくさん来るようになるとちょっと怪しくなってきたので,ちょっと調べてみた。
 案内の言い方は,いつも二つのキーワードがある。peer revies,open occessである。つまり,きちんと査読します,誰にでも読めるように公開しています,ということである。査読があると言うことは,論文の価値が評価されていると言うことであるし,オープンアクセスということは,誰でも無料で読めるので,多くの人に読んでいただけますよ,というわけである。
 実際の所,雑誌は高い。例えば,Soil Dynamics and Foundation Engineeringという私の分野になじみの深い雑誌は,年間購読料は5337ドルであり,とても個人で支払える額ではない。一つの論文でも数千円するのが多い。地盤工学会のSoils and Foundationは今年からOpen Accessになり購読料はなくなったが,それまでは購読料が必要であった。日本建築学会は1系列年12000円である。土木学会論文集は年4000円で論文集としては,ずいぶん安い方である。とはいっても複数の論文集を購読すると金額も上がる。私は,年に学会の会費などで10万円程度払っているが,論文集という意味では充分情報を集めているとは言いがたい。後は,大学や会社頼みである。  なぜ,論文集がこれほど高いのかよくわからない。ただ,日本の図書館ではセットで購入するので,予算を見ると相当の額を支払っているようである。出版社側の理屈もある。例えば,最大の学術雑誌出版社である Elsevierに対しなぜエルゼビアはボイコットを受けるのかでは,出版社側の言い分も載せている。大学では一般にまとめて購入するが,その価格が毎年上がる1)ということで,苦労しているとか,契約をやめるとかいう話も聞くし,一方では,Elsevierに拘わらず,似たような出版社は儲かっているという話を聞く。

 話が横道にそれたが,査読雑誌がオープンアクセスというのは,研究者にとっては魅力である。
 論文を投稿する際に,もう一つ気になるのは投稿料である。peer revies,open occess,かつ,投稿料が無料なんて言うのはあり得ない。そこで,次に投稿料の記述を探すのだが,通常はなかなか見つからない。10万円以上の値段が付いていることもしばしばである。
 そこで,考えてみた。紙の印刷をしないのであれば,Webでシステムさえ作ってしまえば,メインテナンスのお金はほとんど掛からない。また,査読で書いたように,査読料はほとんどが無料である。ということは適当な査読誌を作ればお金儲けができるということではないかと思うようになった。
 そんな折,文献2)を見つけた。同じような発想があることがわかった。文献2)には色々恐ろしい事が書いてある。既往の有名雑誌と同じタイトルを名乗り,研究者を惑わせるサイトがあるとか,高校程度の化学の知識があれば簡単に見破ることができる薬学論文を304の学術誌に投稿したら157誌で受理され,掲載不可は98誌であったとか,色々な話題が挙げられています。
 皆様も,peer revies,open occessに惑わされず,ちゃんとした論文集に投稿するようにしましょう。
  1. 電子ジャーナル価格上昇の理由,http://www.bestlibrarian.jp/2018/05/29/510/
  2. 栗山正光:ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒,情報管理,Vol. 28,No. 2,pp. 92-99,2015

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Updated: 31 May, 2020