『World Folio』Web版に弊社社長のインタビューが掲載されました

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アジアの自然環境に適応したグリーンインフラプロジェクト

 今年4月に弊社社長がWorldfolio(英国通信会社)の取材インタビューを受けて『World Folio』にインタビュー記事が掲載されました。
http://www.theworldfolio.com/interviews/green-infrastructure-projects-adapted-to-asias-natural-environment/4951/
和訳(抄訳)を掲載いたします。 

 基礎地盤コンサルタンツ株式会社は、基礎工学や土質力学を専門とし、6,000件以上の海外プロジェクトに携わってきた世界有数のジオテクニカル・コンサルティング・ファームです。現在、基礎地盤コンサルタンツが取り組んでいるグリーンプロジェクトには、洋上風力発電や地熱発電、動植物調査や保全検討、グリーンインフラの構築などがあります。今回のインタビューで、代表取締役社長の柳浦良行氏は、「サステイナビリティのベストプラクティスと従来のエンジニアリングの発展を結びつけることで、アジア諸国の発展に貢献することを目指している」と説明しています。

近年、建設業界には、東京、福岡、大阪などへの急激な都市化に伴う高層ビルの建設、インフラの老朽化に伴うメンテナンスの増加、そして日本の人口減少に伴う建設プロジェクトの減少という3つの影響が見られました。日本の建設業界についての評価と今後の展望をお聞かせください。

 日本では、世界の地震の約2割が発生し、毎年、台風による洪水や土砂災害が発生しています。このような厳しい自然環境の中でのインフラ整備では、絶えず地震、豪雨等を考えてプロジェクトを進める必要があります。具体的には地震による砂地盤の液状化や地すべり、豪雨による浸水や土砂災害などを考慮したインフラ整備が求められています。東京、福岡、大阪の都市の多くは軟弱地盤上に形成され、高層ビルでは上部の耐震設計だけでなく基礎部の液状化対策を必要とされ、大きな地震を経験する度に基準を改定し、既存建物では補強を行っています。自然災害が多い地盤では、インフラのメンテナンスが大きな課題となっており、地質リスク評価を通じて対応しています。人口減少は一見「マイナス」のような印象を受けますが、生産性を向上させるチャンスと考えています。
 日本は欧米に比べて断層が多くや火山活動が活発な地域であるため、地質構造が複雑です。このため、日本の建設業界は、複雑な地質と格闘しながら建設プロジェクトを完成させてきました。例えば、英仏海峡トンネルでは、均質かつ軟らかいチョーク層を掘削することができました。しかし、同規模の青函トンネルでは、硬軟が連続する岩盤、脆弱な断層破砕帯、突発湧水を克服しながら掘削する必要がありました。
 日本では建設事業が減少してきているため、多くの建設会社や建設コンサルタントは海外で事業を展開しようとしています。東南アジア諸国は日本と同様に地質構造が複雑で自然災害の多い地域であり、日本で開発した技術は、東南アジアの地域にも適用できます。それが日本の建設業界のアジア進出のメリットとなると考えています。

東南アジアや日本、環太平洋諸国の地盤は、おっしゃるとおり欧米とは異なります。東南アジアの地震が多い地域にも応用できるとのことですが、御社の技術と海外での応用について詳しく教えてください。

 日本の地盤調査では、ボーリングを行い地中から土のサンプルを採取し、そのサンプルを観察した後、試験を行って評価します。基礎地盤コンサルタンツでは、砂礫地盤の液状化評価のため、高分子ゲルを用いて高品質な試料を得るためのサンプリング技術、いわゆるGPサンプラーを開発しました。現在、この技術をAPACやヨーロッパなどの海外に輸出しています。また、現在、砂地盤を部分的に凍結させる小規模凍結サンプリング手法の開発を行っています。
 日本では、2011年3月11日の東日本大震災による福島原子力発電所の事故をきっかけに、再生可能エネルギーや代替エネルギーの開発に力を入れており、洋上風力発電のプロジェクトが増えています。日本は欧米に比べて洋上風力発電の導入が遅れていますが、その理由の一つが先に述べたように日本の地質構造は複雑であり自然災害が多く欧米のそれとは全く異なることです。このため、慎重に地盤条件を検討しなければならないし、調査、設計、施工、維持管理方法を日本の環境に合わせる必要があります。例えば、洋上風力発電を予定している箇所の海底地質リスクマネージメントを始め、調査、設計、施工、維持管理を通したリスク検討を行っています。今後、このマネージメント技術を日本と同様な地質構造が複雑で自然災害の多い東南アジアに輸出することを目標としています。弊社は、洋上風力発電の初期段階から関与しており、現在、弊社は洋上風力発電のリーディングカンパニーのひとつとなっています。

自社の技術を海外に持っていくために、どのような戦略をとるのか。具体的にどの国に技術を提供しようと考えていますか?

 今後、GPサンプリング技術、小規模凍結サンプリング技術、海底地質リスクマネージメント技術などアジアを中心とするインフラ整備に貢献できる新しい地盤調査技術を開発し、アジア諸国でのビジネス拡大につなげたいと考えています。

日本の建設業界は、IoT、AI、ビッグデータ、クラウド技術などのテクノロジーの導入が遅れていると強く批判されています。あなたの具体的な事例では、Kiso Cloudをお持ちですが、革新的な技術をどのようにサービスに導入して、お客様により良いソリューションを提供しているのか、教えていただけますか?

 現在、3D地質モデルを作成し、プロジェクトの目的に応じ、どこに地質リスクが存在し、どこの地盤情報を詳細に追加調査すべきかの検討に使用しています。事例として、シンガポールのプロジェクトでは、地下500mの3Dの地質モデルを作成し、今後のインフラ整備における地質リスクを明らかにしました。

専門家によると、世界の建設業界は約11兆ドルの成長を遂げ、その半分をアジアが占めると言われています。この成長をどのように利用しますか?

 日本の場合は、新しいインフラを造るだけではなく建設されたインフラをどのようにして補強、補修などを含めた維持管理を行うことが重要と考えています。また、今後20年から30年の間に、アジアの他の国々も日本と同様な状況になります。その時、現在日本で開発されている技術が活用されることを期待します。

国際的なサービスの概要と、主な競争力について教えてください。

 シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズでは、統合型リゾートの安全で経済的な地盤設計を可能にする高品質な土質試験結果を得るための土質調査を実施しました。また、エスプラネード・シアター・オン・ザ・ベイでは、地盤設計のサービスを提供し、イオン・オーチャードとオーチャード・レジデンスでは、フルセットの地盤情報サービスを提供するなど、多くのプロジェクトを行いました。
 サウジアラビアでは、アルマダタワーの地盤調査プログラムの立案と現場作業の監督、そして基礎の分析と設計に携わりました。
 インドネシアのシグネチャータワーのプロジェクトでは、特殊なサンプリングツールを使用して、調査中に出現するあらゆる種類の土層から高品質の不かく乱のサンプルを採取し、調査深度全体でシームレスな地盤情報を提供することができました。
 マレーシアのKLIA2では、詳細な地盤調査の監督、地質断面の解釈、解析のための地盤定数の決定などのジオテクニカルサービスを提供し、杭の解析、斜面や掘削物の安定性調査も行いました。
 当社は、アジアの厳しい自然環境と複雑な地質構造に対して、50年以上の経験と実績を持っており、アジアで最も信頼できる地盤コンサルタントとして、現地に根付きながらアジアを中心とする大型プロジェクトに挑戦し続けたいと考えています。

先ほど挙げたような案件は、どのようにして見つけられるのでしょうか?クライアントはどのようにしてあなたのところにやってくるのでしょうか?

 日本の建設コンサルタント会社が海外で事業を行う場合、通常はODA(政府開発援助)を利用します。一方、私たちの会社は、現地に密着したサービスを提供するため、現地法人化し、現地のコンサルタントとして活動しています。従って競争相手は日本ではなく、中国、韓国、ヨーロッパの企業です。私たちのコンサルタント料金はかなり高価ですが、それでもお客様が私たちを選んでくださるのは、お客様のニーズに応えられる技術を提供しているからです。東南アジア地域で50年以上前からこのような方法で仕事をしており、その実績があるからこそ、海外の大型プロジェクトに携わることが出来ているのです。

日本の建設会社の中には、新市場への参入や新技術の導入のために、共創や共同開発の観点からパートナーを求めて海外にシフトしているところがいくつか見受けられます。あなたの会社では、新しい市場を獲得するために、共創やパートナーシップがどのような役割を果たしていますか?

 洋上風力発電に関しては、ヨーロッパの会社が先行し、多くの技術を蓄えています。私たちは、地盤コンサルタントとして世界的に有名なノルウェー地質工学研究所(NGI)と提携し、洋上風力発電における地盤情報サービスを共同で提供する予定です。また、自分たちの技術を向上させ、新しい市場を獲得するために、多くのパートナーと提携しようとしています。

将来に向けて、企業の成長を継続させるための中期的な戦略を教えてください。

 今、私たちの目標は、今後10年間で売上を2倍にすることです。このため人・夢・技術グループ(株)を2021年10月から造り、グループ企業と共に協力して目標を達成したいと考えています。

御社は国内外で数多くのプロジェクトを手がけていますが、特に誇りに思っているプロジェクトはありますか?

 5年前の熊本地震において、大規模な地滑りが発生し、橋を含めて鉄道、国道、河川等の多くのインフラが破壊されました。震災後すぐに、私たちは延べ3,000人のエンジニアを現地に派遣し、復旧復興のための地盤調査、設計を行い今年の3月に復旧工事が完成しました。
 もうひとつの誇りは、英国地質調査所の協力を受けながらシンガポールで3D地質モデルを作成した事です。このプロジェクトは、私たちにとって非常に貴重な経験でありそれまでになかった知恵やノウハウを身につける機会となりました。このようにして得られた知識や技術を日本で応用しています。

5年後に再びインタビューするとしたら、どんなことを話したいですか?その時までに、あなたの会社に対する夢や達成したいことは何ですか?

 私たちは最近、衛星を利用して世界各地の地滑りなどの土砂災害を予測する技術の開発に着手しました。この技術を使えば、地震や豪雨後に、どの地域が災害に遭いやすいのかが分かるようになります。5年後、私たちが取り組んでいるこの技術が社会に役立っていることを願っています。
 また、グリーンプロジェクトの分野で中心的な役割を果たしたいと考えています。数年前から始めた再生可能エネルギー関連の洋上風力発電や地熱発電開発、ラムサール条約関連の動植物調査や保全検討、カーボンニュートラル関連のグリーンインフラや地域循環型社会の創生などを、従来のインフラ整備と連携させ、アジア諸国の発展に寄与したいと願っています。

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当社紹介記事が、『Newsweek International Magazine』のレポートに掲載されました